ポスティング業界には健全なポスティング活動を業者に呼びかける、日本最大規模の『日本ポスティング協同組合』が全国に設立されています。
その中の神奈川県を含めた関東ブロックでは現在、加盟済27業者が相互に動向を監視し、業者や投函員の非常識なポスティング行為の再発防止に取り組んでいるとの事。
そこで、非常識なポスティング行為として挙げられる数々の「禁じ手」について考察してみたいと思います。
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関東に事務所を構えるポスティング協同組合とはどのような組織か?
日本ポスティング協同組合の公式ホームページには企業理念がいくつか掲げられています。
・法令を遵守し、業務を通じて業界の確立と地位向上を目指す
・組合員は相互扶助を行う
・社会的使命を自覚して企業倫理を高め、地域に貢献する
ポスティング事業が企業の広報活動の一環であり、同時に業者にとっても広告物配布の代行業である以上、ターゲット・マーケットの観点からみてもクライアントである広告主(企業)と業者間、ひいては所属する投函員が実社会とのつながりを重視するのはごく自然の事でしょう。
しかし、実際にはこの想いとは正反対の悪事が連綿と続き、業界のイメージダウンにつながっているのが事実。その最たるものが違法・悪徳ポスティング業者の存在です。
そういった業者は雇用した投函員に十分な教育を行わず、法律や法令、規範や信義則を一切無視した違法かつ悪徳なポスティング事業を行っています。
例えばチラシ1つとってみても、違法性の高いものを数多く取り扱っており、また健全なポスティング業者に交じって細々と深夜帯を中心にポスティング活動を行っているため、なかなか実態が掴めないようですね。
投函手法としては、一般的なチラシと不健全なチラシを併配、あるいは重配している傾向があります。
違法・悪徳ポスティング業者はどのようなチラシを配布しているのか?
違法・悪徳ポスティング業者は通常の社会で認知されている広告物以外に、各都道府県で定められた「迷惑行為防止条例」に抵触するチラシも取り扱っています。例えば神奈川県の場合、迷惑行為防止条例第10条の第3項に該当する『正当な理由もなく、わいせつ物を頒布する』業者がそれに該当します。
わいせつなチラシと言えば、女性の裸身や性器を克明にプリントアウトしたものだけでなく、近年社会問題化している出会い系チラシも当然含まれます。この他にも法外な金利で貸し付けを行い、借受人の社会生活を脅かす怖れの高い闇金融系のチラシなども取り扱っています。
迷惑行為防止条例に抵触するチラシを配布したらどのような罰則があるか?
一般に言う「迷惑チラシ」の最たるピンクチラシをポスティングした場合、ポスティング業者並び広告主の身元が特定されれば、神奈川県のみならず他の都道府県でも条例違反となります。
罰則も重く、100万円以下の罰金または拘留もしくは科料に処せられるとの事。
最近は警察や関係省庁の取り締まりで減っている傾向にありますが、闇金融系のチラシも場合によっては条例違反になる怖れがあります。
配布先にとって迷惑なチラシかどうかはチラシの特性にもよりますが、例えば賃貸マンションで分譲マンションなどの不動産のチラシを配った場合、賃借人の流出による収益減につながる怖れがあるため、この場合は経営を妨害する迷惑チラシと判断されても法律上はおかしくないでしょう。
違法・悪徳ポスティング業者が強要するポスティングの禁じ手とは?
それでは、違法・悪徳ポスティング業者が日夜平然と行っている、業界で「禁じ手」と言われて封印している投函行為をいくつか挙げてみましょう。
禁じ手その① 個別の『チラシ禁止』のポストに平気で投函する「なんちゃって投函」
本来、戸別のポストに貼り出されている「チラシお断り」については社会規範上、チラシ投函を良しとしない世帯の意思を尊重しなければいけません。
でも違法業者に雇われた投函員は善悪の判断もつかないまま、平気でチラシを投函します。
何らかの協同組合に加盟しているポスティング業者であれば、投函員に個人のチラシ禁止ポストに投函させることを絶対に許さず、間違って投函した者には例えチラシ1枚でも必ず回収させるような強い姿勢で臨む事でしょう。
逆に言えば、故意に投函されたチラシからポスティング業者が特定されますので、上手くいけば違法・悪徳業者の摘発につながるかもしれませんね。
禁じ手その② ポストに同じチラシを何枚も投函する「二重・三重投函」
朝、ポストを開けてみると同じチラシが何枚も入っていた・・・このような経験はありませんか?
故意ではなく、チラシのくり方やすべり具合が悪かったせいで自然にチラシ同士がくっついてしまい、そのままポスト内に投函されたケースもたまにはあるかもしれませんが、もし、どの郵便ポストにも同じようなチラシが何枚も入っていた場合、投函員が二重・三重投函を行ったとみて良いでしょう。
二重・三重投函は違法ポスティング業者の指示というよりも、投函員の意思で行われている傾向があります。そもそもクライアントである広告主が広告費の増大につながりかねない多重投函を許可するはずがありませんし、業者としても「1ポスト1チラシ」を最低限のルールとする以上、ポスティング代行業自体の信用にもかかわる筈です。
ですからこの誤った投函は、投函員の資質の問題だと置き換えても良いと思います。また、そうした問題のある投函員を雇用したポスティング業者にも責任の一端があるように思えますし、たとえ違法・悪徳業者でなくても実社会からそういった目で見られても仕方のない事でしょう。
禁じ手その③ チラシを握ってポストに突っ込む「握り投函」
A4・B4など製版サイズの違いこそあれ、刷り上がった広告はデザイン性豊かでカラフル、実に綺麗なものです。
広告の反響効果を調査した結果、昨今ではチラシを曲げたり、折ったりしないでそのまま、真っすぐに投函する事をポスティング業者や投函員に求める広告主が増えています。
ところがそういった時代の流れに逆行するかのようなポスティング業者が未だに存在し、投函員がチラシを握り潰し、ポストに突っ込む乱暴な投函行為を黙認しています。
潰された自社のチラシを見た広告主が違法・悪徳ポスティング業者に対してどのような態度に出るか、皆さんならもうお分かりですよね?
禁じ手その④ 大量のチラシをポスト周辺やゴミ箱にそのまま投棄する「置き捨て」
例えば集合ポスト周辺に大量のチラシを故意に投棄してそのまま立ち去る「チラシの置き捨て」も、代表的な禁じ手の1つです。もしお忍びの配布チェックで該当物件を訪れた広告主にその事実が発覚した場合、投函員は職務怠慢または職務放棄を理由に問答無用で業者から解雇され、さらにポスティング業者はクライアントから信用を全て失うだけでなく、損害賠償(弁償・弁金)の責も負う事になるでしょう。もちろん、取引の全面終了は避けられません。
最近の神奈川県ではチラシの置き捨てだと分からないように、ポスト周辺に設置したチラシ廃棄用のゴミ箱に丸ごと投棄したり、何枚かに分けて草むらに捨てたりした事例もあるとの事。
こうなったら業者の違法性を問う前に、投函員の社会常識を疑うべきなのかもしれませんね。
まとめ
協同組合には、他にも東京・千葉・埼玉・神奈川といった首都圏の4県で構成される『首都圏ポスティング協同組合』が存在しますが、やはり違法・悪徳ポスティング業者の数はなかなか減らず、指導や更生、撲滅にはまだまだ時間がかかっている模様です。
とかくダークな印象を世間に持たれるポスティング業界。
社会から良く思われる日はまだまだ先の事かもしれませんが、是非とも健全な業界として歩んでいく事を祈ってやみません。