神奈川県・ポスティングレポート~予想を超えた、とんでもクレーム集

クレームとは何らかのサービスに対して苦情を出す、改善を要求するなどを指す言葉です。

ポスティング業界でのクレームとはチラシポスティングそのものであり、物件側が求めてもいない一方的なサービス(=投函)に文句をつけ、迷惑な行為を自制するよう広告主やポスティング業者あるいは投函員に要求するのが一般的です。

それで問題が解決すれば良いのですが、現状は改善されるどころかキツネとタヌキの化かし合いのように悪化する一方。
最近ではしびれを切らした物件側がモンスタークレーマー化しています。

ポスティングは本来、広報活動というれっきとした商行為の一つ。
ただ単に撒けば良いというものではありません。
世の中にはチラシからの情報を必要としている人が必ずいるはずです。
投函するチラシの商品やサービスがどれだけ多くの人々に必要なものなのか、物件側に説明するなどできる範囲で努力してみましょう。

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ポスティング業界で実際に発生した、とんでもクレームの数々

「チラシ禁止の貼り紙や看板がない物件だったら黙ってポスティングしても大丈夫。」
そう言い切れないのがこの業界の怖さ。

チラシを迷惑に思う住人からこっぴどく叱られる、大家や管理人から恫喝される、暴力を振るわれる、迷惑料〇万円を請求されたというのはよく耳に入るケースです。

以下紹介するのはポスティングの現場で実際に起こった、とんでもクレームやトラブルの代表例です。

クレームその① 住居侵入罪で警察通報

平成19年に神奈川県が制定した迷惑行為防止条例の第10条第1項で「迷惑ビラ等を配る行為等の禁止」が明文化された結果、「チラシ禁止の貼り紙や看板が設置されているにもかかわらず無断で投函した場合、不法な住居侵入罪に当たる」との見解が最高裁判所の過去の判決で出ています。

したがって、ポスト周辺にチラシ禁止の貼り紙や看板がない物件でも、管理する大家や管理人に黙って郵便ポストに投函した場合、チラシの内容によっては罪に問われることもあるわけです。

近年は住居侵入罪で警察に通報する物件も増えていますので、もし配布指示書や配布マップに「通報歴あり」などの理由で投函禁止物件の名称が明記されている場合、該当する物件への投函は絶対にやめましょう。

クレームその② 条例違反で罰金〇〇万円!

各都道府県が制定した迷惑行為防止条例の中では、社会の秩序に悪影響を与えるチラシの種類について規定を設けています。神奈川県の場合は風俗チラシが条例に違反するチラシとして指定されています。

例えば「ピンクチラシ」と呼ばれる風俗チラシなどは、子供の教育上「迷惑なビラ」に該当します。もし訴えを起こされたら、条例違反で50万円以下の罰金または拘留・科料がポスティング業者ならびに広告主に課されることになります。

他にも迷惑行為禁止条例に関連する法律として風営適正化法がありますが、罰金の最高額はなんと100万円!

ポスティング業者や投函員にとっては耳の痛い話ですが、条例に違反するような反社会的な広告主のチラシを取り扱わない、投函員はポスティングしないことが第一です。
条例や法律の趣旨を理解してしっかりと守りましょう。

クレームその③ 100%回収不可!全チラシ回収

投函後しばらく経った後、投函先のオーナー(管理会社・個人)から全チラシ回収のクレームが出るともう悲惨。

チラシを自宅に持ち帰る住人だっていますし、チラシをどこかに捨ててしまう人だっている訳ですから、全ての物件から投函したチラシを全部回収するのは事実上不可能です。

「1枚でも足りない場合は警察に即通報する」
「責任者を呼び出して一緒に土下座してもらう」
「迷惑料10万円をこの場で支払ってもらう」

などと言いがかりをつけられることもありますから、全チラシ回収は絶対に遭遇したくないクレームの一つです。

クレームその④ ポスティング中、大家に包丁を突き付けられる

『ありとあらゆる業者から集合ポストにチラシを無断で投函され、溢れんばかりのチラシの廃棄に体の不自由な年配の大家が毎日四苦八苦していた。ある日ついに大家は業を煮やし、無断でポスティング中の投函員に包丁を突き付けて追い払った。後にこの大家の所有物件は投函厳禁物件としてリストに加えられ、ポスティング業者間で情報共有されるに至った。それ以来、年配の大家がチラシの実害に悩まされることは一切なくなった。』

嘘のような本当の話、明らかに常軌を逸したクレームが実際に起きています。

罰金100万円といった理不尽なクレームや激しい恫喝、暴力沙汰や生命の危険を伴うトラブルなどが発生した場合、相手先の物件は直ちに投函厳禁・禁止物件に指定されて業者間で回覧されます。

ポスティング業界でも業者間の助け合いはあります。

どうしてもその物件に投函したいのであれば、謙虚な姿勢で挨拶に赴くなど、きちんと礼を尽くす必要があるのではないでしょうか。
投函サイドはマナーをわきまえながら率先してトラブル防止に努めましょう。

クレームその⑤ 個人のチラシ禁止のポストに投函したばっかりに・・・

ついつい軽視しがちですが、単独でチラシ禁止を謳う郵便ポストへの投函は絶対にやめましょう。チラシ禁止だけでなく回収・罰金・通報をほのめかすポストは、ほぼ100%クレームになります。

誤って投函した場合、ご家庭にお詫びした上でチラシを即時回収しなければいけません。
理由はトラブルの元を絶ち切る必要があるからです。

中にはなかなかお詫びと回収に応じてくれない厄介なご家庭もあり、延々と2~3時間もお説教をされたこともあるそうです。

投函の際は一つ一つの郵便ポストの但し書きに目配り・気配りしてくださいね。

クレームその⑥ 雨天に配布したことで起きた最悪のトラブル

台風や豪雪、梅雨時の集中豪雨などの悪天候の場合、神奈川県だけでなく全国各地で配布そのものが中止になることがありますが、それはあくまで広告主やポスティング業者の立てた配布計画に著しい遅れが生じていない場合の話です。また、必ずしも人道的な立場に立って中止するとは限りません。

ポスティングは広告先企業の事業計画・販売計画に基づいて立案・実施される広報活動の一つ。そこに遅れが生じると販売実績に大きな影響が出てきます。

中には多少の雨や雪でも配布を決行するポスティング業者も・・・。

だからといってチラシをずぶ濡れにしたままポストに投函してもいいのでしょうか。
他の郵便物が濡れてしまい、ポストを開けた途端に汚らしい印象を相手に与えてしまうでしょう。

雨天に配布して起きた最悪のトラブルとは、両親からご子息に届けられた大事な手紙が雨でずぶ濡れになってしまい、送り主の名前や住所だけでなく手紙そのものもインクが滲んで読めなくなったケースです。

この場合、郵便物の保護を謳う郵便法の規定では損害賠償の対象にはなりません。
ただし雨に濡れたチラシを郵便ポストに投函して実際に何らかの被害が出た場合、「迷惑行為」として立件できれば、ポスティングを指示した業者(投函員含む)や広告主に何らかの補償を求めることは可能です。

当然と言えば当然、こうした厳しいペナルティがポスティングにつきまといます。
雨天配布は配布スケジュールの関係でどうしても避けられない場合が多いですが、カバーに入れるなどチラシの防水対策だけはしっかり行いましょう。

クレームその⑦ 故意でないチラシの置き捨てでもチラシ代弁償

このケースは配布先物件の住人や大家、管理人から出たクレームであると同時に、投函員の職務観や責任感の欠如の問題と捉えたほうが妥当かもしれません。

例えば実務でよくある、以下のケースが考えられるでしょう。

『たまたま集合ポストの数が多く、ついチラシに手が回らなくなった。仕方なく集合ポストの床下に大量のチラシを置いてしばらく投函を続けたが、投函後も残ったチラシに全く気づかずにその場を立ち去ってしまった。』

この行為は業界用語で「置き捨て」と言い、あまりにも程度が過ぎる場合はチラシの弁償だけでなく、故意の有無を問わず解雇になる可能性が大です。

ポスティングに慣れないうちはチラシを必要以上に持っていくと、このようなケアレスミスを犯してしまうことがあります。ストック分のチラシを収納するリュックサックやポシェットなどを携行して置き捨て防止に努めましょう。

以上、実際のポスティングで起きた、とんでもクレームやトラブルの数々を取り上げてみました。

チラシを全く必要としない人が相次ぐチラシの投函で多大な迷惑を被り、平常心を激しくかき乱してしまった・・・憤りのあまり、とてつもないクレーマーになったのだと認識していただければ幸いです。

因果応報-ポスティングの世界はまさにこの一言に尽きるでしょう。
チラシを活きた情報源にするのも、ただのゴミくずにするのも、全ては投函する人間次第です。

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